松尾画報

辺境のカンガルーの近況

箸が転んでも

気持ちいい風が吹く季節になるたびに思い出すこと。

大学2回生の秋、先輩の下宿でおでん大会をしていました。
所属している音楽サークルの面々10人くらいで。
宴の途中で、おでん先輩のケータイに電話がかかってきました。

学科の友人からのお願いの電話だったようです。
「人数がいるんだ!いま学内で開かれている学生集会に駆けつけてくれ!」と。
「学園祭の模擬店出店における不平等なルールへの反対集会」みたいな感じ。

うおお!なんだか学生っぽくていい!とみんなテンションが上がって、
みんなで思いっきり自転車を漕いで、急いで大学に向かいました。
うちのサークルは模擬店は出店しないので、ほぼ関係ないんですけど。

途中、横断歩道でおでん先輩は、左折してきた自動車と派手にぶつかりました。
吹っ飛ばされる先輩。転がる先輩。起き上がる先輩。自転車に跨る先輩。
「僕は大丈夫です!急いでるのですみません!」とまた爆走する先輩。

後に続く私たちは先輩ではなく、自動車に乗っていた女性の心配をします。
特にヘコみとかもないので、警察に届ける必要はないですかね、という話に。
よかった、車とおねーさんが無事で。

先輩はすでに見えず、私たちも再び自転車を漕いで後を追いますが、
段々とこらえきれない笑いがこみ上げてきました。
なんかもう、アクション映画みたいな吹っ飛ばされ具合だったな、先輩。

楽器演奏にそんなに筋肉はいらないだろうという、鋼の肉体の先輩。
楽器演奏には必要ないけど、車からは守ってくれるんだな、あの筋肉は。
いやでも、本当に見事な、100点満点の吹っ飛ばされ具合だったな。

誰かが堪えきれずに吹き出し、笑いの洪水が堰を切って私たちを襲います。
気持ちいい夜風が吹く中、ケラケラケラケラと、お腹がねじ切れるくらい。
のけぞるように笑っちゃうもので、もはや自転車もまともに漕げない。

止まらない笑いでお腹と涙腺にダメージを受けながら、
途中からはなんで笑ってるのかもよくわからなくなり、
同じように笑う友達の顔が面白くて、また笑ってしまう。

この事件以降「秋の夜=大爆笑した夜」という図式が、
おでん先輩以外の9人の頭に出来上がってしまいました。
いまだに、気持ちいい秋の夜風に吹かれると思い出します。

今でもごく稀に笑いが止まらないときがありますが、
あのときのお腹の捻れ具合には全然及びません。
何がそんなに面白かったのかもはやよく分からない、不思議な思い出。

おでん先輩はすり傷のみでした。
筋肉って、すごいですね。役に立つんですね。
ランキングやめて、筋トレにしようかな。