松尾画報

辺境のカンガルーの近況

放浪記vol .4

あんまりたくさんお酒を飲むのはよくないですよね。

じゃあ、今日は休肝日についてお話をしましょうか。

でもね、待ってくださいよ。

あなたが普段どれくらいお酒を飲んでるか、

私は全く知らないわけです。

 

けど、よく考えてみてください。

知らない人に向かって何かを話しかけるということは、

ある意味ものごとが始まる最初の一歩です。

だって最初はみんな知らない人じゃないですか。

生まれた時はみんなゼロからスタートするわけじゃないですか。

 

今はね、スマホで調べれば、大抵のことはわかるわけですよ。

情報へのアクセス手段って、進化しすぎてえげつないわけですよ。

もちろん情報の質の良し悪しという観点もありますけどね、

軽いものは軽く調べることができる世の中になってしまったんですよね。

だからかな、知らない人に向かって話しかけることも、減ってきたのかなぁ。

 

そのせいもあると思うんですけどね、図書館に行かなくなりましたよね。

好きなんですけどね、あの物音が響く静寂な空間と、古い本の独特の匂い。

本を借りる時にね、貸出カードに日付を書き込むじゃないですか。

がさっとした筆圧の鉛筆と、むっと湿った紙の感触、そして借りた本への期待感。

スマホの調べ物じゃ得られないですよね、あれって。

 

え?何?休肝日の話はって?

そんなものはね、とってもパーソナルな問題なわけだから、

パーソナルな解決方法で、あなたが好きに処理してくださいよ。

え?何?私からその話ふってきたんじゃないかって?

いやだなぁ、お兄さんから話しかけてきたんでしょ、もう忘れちゃったの?

 

ねぇねぇ、お兄さん、それってiPhone 11?

あ、11じゃないの?Xなの、ふぅん、私には違いが分かんないなぁ。

いやー!けど便利だよねぇ!スマホって!

今の若い子なんて小さい頃から使ってんでしょ?いいなぁ!

もう図書館なんて行こうと思わないもんねぇ、スマホサイコー!乾杯!

 

 

 

 

 

って話す人にこないだ会いました、立ち呑み屋で。

冒頭の文章の感じで、急に話しかけてきたんです、本当に急に。

お、面白そうなおじさんだと思って、話に乗っていったんですよね。

 

図書館が好きってくだりはなかなかいい描写で話すなぁ、と思ったんですけど、

なぜか「スマホサイコー!図書館行かねぇ!」という話に落ち着きました。

数分後「話聞いてくれてありがとうね!お兄さん!」とお会計して帰っていきました。

 

もしかしたら、図書館の職員さんだったのかな?あのおじさん。

図書館とスマホについて、いろいろと思うところがあったのかもしれません。

世の中のあり方の変容を垣間見た、のかもしれません。立ち呑み屋でね。