松尾画報

辺境のカンガルーの近況

印象深い

ここ数日、とある作家の旅行記を読んでいました。
誰も名前を知らないような、欧州の作家の中東旅行記。

旅行記っていうか日記っていうか、
旅情など一切ない、記録的な記述も多々。

読者なんて意識していなさそうな感じ。
ま、日本と彼の母国ではまた感覚も違うでしょうけど。

なんなんだ、この独白集みたいな本は、と思って読みつつ、
ただ、食べ物の記述が妙に印象的なんですよね。

記述自体はすごくシンプル…っていうか、味気ない。
ほんと、日記に近い。味気ない。

固いパンに、ハムとチーズと名も知らぬ緑菜を挟む。
固さは気にかかり、調和した味ではないが、自然な味わい。

故郷のパンの味とは、似ても似つかぬ。
けれど、パンもチーズも、食べればそれはやはりパンとチーズだ。

みたいな感じで描写されているんです。
変な翻訳…いや、原文も変なんでしょう。けど妙に印象に残る。

そう言われると、固いパンにいろいろ挟みたくなります。
調和しなくてもいいんだ、自然な味わいになるのなら、って感じで。

風景や人の描写になると、途端に説明的で面白くなく、
読むのが辛いほどの文章になっちゃうんですけど。

でも、少しでも印象に残る言葉があるっていいですよね。
そういう響きに耳を傾けるのもまた、いいものです。