松尾画報

辺境のカンガルーの近況

言葉を選ぶ

前回と同じテーマのお話。
全体でなく一部を取り上げて、批判を展開してしまうこと。
現代における寛容性の話とでも言いますか。

これまた96年の音楽シーンの話ですが、
真心ブラザーズというグループに降りかかっていました。
「拝啓、ジョン・レノン」という曲への批判。

レノン愛に溢れまくった彼らが作った曲なんですが、
「歌詞の一部がジョン・レノンを冒涜している」
というクレームを受けて、放送禁止にする局があったりとか。

同じころ、ダウンタウンの番組でも少し似たようなことが。
即興トークでイマイチボケの切れが悪い松っちゃんに対して、
「松本ー!お前の仕事はなんやー!」と浜ちゃんがキレるんです。

アドリブでそういう方向へ持っていった笑いなんですけど、
演技でなく浜ちゃんが本気で怒っている、と思った人もいたみたいで。
「そう見えた人がいる方が驚きやわ」と翌週に話してましたが、彼ら。

「そう取られるなんて思ってなかった、それは誤解だよ」
これを避けるためには万人に間違いなく伝わる、
誤解を与えない確実な表現をしなければなりませんね。

けど、そういうのって往々にして面白くなく、興味を引かない。
企業や行政の広報ではなく、娯楽の芸や表現として発信しているわけで。
そこに多少の毒やシニカルさや逆説的表現なんて、あって当然なんです。

ホフディランや、真心ブラザーズや、ダウンタウンが、
誤解を一切生まない表現でそれぞれをリリースしたとすれば、
ある意味ではプロじゃないですよね。だって、きっとつまらないから。

最近は発言ひとつにも非常に気を使う世の中です。
失言しないように、傷つけないように、炎上しないように。
そういう姿勢も大切です。が、表現の仕方にもTPOはあるはず。

難しいですよね、伝えるということは。
揚げ足を取ることも悪いことだとは言い切れませんが、
面白さを理解した上で、言葉を選べる人になりたいものですね。