松尾画報

辺境のカンガルーの近況

傷つけない

またまた昨年末のM-1グランプリのお話を失礼。

見てない人には何のことやらでしょうけど、すみません。

 

決勝進出を果たしたちょっと色物キャラコンビの漫才を、

審査委員長は「ノリ突っ込まないツッコミ」と評しました。

たしかにありそうでなかった感じといいますか、

なんか「現代風」だなぁ、と思ったんですよね。

 

「いや!お前!いい加減なこと言って………なんてない!」

「漫画みてぇなボケしてんじゃねぇよ!…って言うけどその漫画って何ですか!?」

とかそんなんです。基本、否定しない。

プラス、納得による共感や自虐で笑いを誘っていきます。

 

優勝コンビの「大声でゆっくり説明してあげるボケ・ツッコミ」も、

時代の流れに即しているという評をよく見ました。

こちらのコンビは、個性的な偏見による毒を入れたツッコミもしますが、

着眼点や言葉選びの面白さもあって、全然悪口に聞こえないんです。

 

誰も傷つけない漫才・ツッコミなんですよね、二組とも。

「否定せずにうまくイジってあげている」というスキルがあります。

優勝コンビのネタにされた「コーンフレーク」「最中」メーカーなんて、

ここぞばかりに各種情報発信していましたし、取り上げてもらって嬉しいですよね。

 

誰しもが情報を発信したり、自分に合うものを検索するのが容易な時代。

同時に「そんなつもりで言ったんじゃなかったのに」も潜んでいると思います。

価値観や感じ方が多様化、そして見える化が進むことによって、

思わぬ地雷を踏んじゃう危険性も、日常のそこかしこにゴロゴロしてます。

 

別に昨今急に出てきたわけでなく、もともとあった意見や感情でしょうけど、

表面化しやすい社会・システム・風潮になっているんでしょうね。

心の底ではみんなそれを分かって、恐れて、警戒しているんだと。

そういう現代人に刺さりやすかったんじゃないでしょうか、彼らの漫才。

 

漫才ひとつとっても、時代の鏡ですね。

そしてそんな意見もすぐ検索して読めちゃう世の中です。