松尾画報

辺境のカンガルーの近況

おやさい賛歌

小さい頃は、あなた達のことが嫌いでした。

10年以上、ずっと。嫌いでした。はっきりいって。

 

身体にいいっていうのは知ってたんです。

大人たちに口すっぱく言われてきましたからね。

 

けどね、せっかくだから言わせてもらいますよ。

率直に言ってね、子どもの口にあわないんですよ、あなた達の味は。

 

子どもが求めてる甘さっていうのは、あなた達じゃないんです。

もっとわかりやすい、砂糖的な甘さなんです。

 

それがなんなんですか、あなた達のその甘さは。

一応、糖なんですか?そのほのかな甘さは?なんなの一体?

 

食卓に「今日のノルマ」みたいな顔して出てきちゃって。

出たがりなんですか?口も聞きたくありませんでしたよ、幼少の頃はね。

 

せっかくですからね、今日は言いたいこと言わせてもらいますね。

こんな機会、ありそうでないものですからね。

 

嫌いでした。さっきも言ったけど、本当にずっと嫌いでした。

あなた達のために、一体どれだけ食卓で涙を流してきたことか。

 

まぁねでも、いつからだったか、少しだけ分かり合えてきたかもしれませんね。

成長期だったからかな。別にあなた達でなくても良かったんだけど。

 

え?なに?最近のこと?そんな話、今日はしませんよ。

昨日もしなかったし、明日も明後日も、何十年後に聞かれても話しませんよ。

 

役枠然としたキャラなのに、何ちょっと攻めてきてるんですか。

あなたは生意気な口聞かず、隅っこでずっと静かにしてればいいんです。毎日。

 

いつもいただきますと同時に食べちゃって、それでもうサヨナラですよ。

私の記憶に残るのはいつも、メインディッシュの彼だけなんだから。

 

別に先に食べるからって、あなた達のことが一番ってわけじゃないですからね。

身体にいいんだから。仕方ないでしょ。心身に優しいんだから、仕方なくです。

 

そうね、話してもいいかなってことはいくつかあるんだけど。

それはまた、次の機会に話しましょ。どうせ明日もいるんでしょ、どうせね。

 

今日はもう、浅めに漬けられたあなた達と焼酎でシメましょう。

…あぁもう、また、いるじゃない。最初から最後まで側にいるじゃない、あなた達。

 

ほんと、なんなの、あなた達は。

やっぱり一度、本音でゆっくり話し合わなければなりませんね。