松尾画報

辺境のカンガルーの近況

雰囲気重視

年に数回、不動産関係の広告を作ることがあります。

新築マンションのパンフレットとか、学生の下宿先をたくさん掲載した小冊子とか。

 

当たり前なんですけど、どこも物件の利点を強調するわけです。

駅や学校に近いとか、家賃が安いとか、周辺施設が便利とか、まあいろいろですが。

「駅まで徒歩1分」「更新料なし物件」とか、強みがある物件は納得のコピーなわけですよ。

でも当然、そうでない物件もたくさんありますよね。

そういう物件には、なかなか強引なコピーが付いてくることもあるわけです。

 

 

 

例えば、JR大阪駅の少し西に福島という地域があります。

市内を周る環状線の「福島駅」と、尼崎に抜ける東西線の「新福島駅」があるんですが、

このふたつを差して「福&福の幸せいっぱいマンション!」とか付けてくるわけです。

もうちょいなんかアピールするところあるやろ…、と思って不動産屋さんに電話するわけです。

 

「西の野田阪神まで出て、阪神線と千日前線も使えるとか言っちゃダメですかね?」

『あ~、あかんねん。そっちにも取扱物件あって、千日前線近いのはそっちの物件で押したいねん』

「んー、いろんな大人の事情ありそうですね。じゃあ仕方ないですね、今回は福&福で…」

 

まあ、福島は賑やかで楽しそうなイメージありますし…。

幸せいっぱい感なデザインで作っときました。

 

 

 

また別の案件、京都の物件。

「憧れの烏丸に住まう」とありますが、烏丸通でなく西の堀川通に激近なわけです。

「いやいや烏丸て。どう見ても堀川やろ、コレ」とツッコミたくなる場所。

烏丸通は地下鉄がありますから、近いのをアピールしたいのは分かるんですが。

さすがに「烏丸に住まう」は烏丸通に面していると誤解されかねません。電話します。

 

「烏丸はまずいでしょうから、烏丸エリアに変えますよ?いいですよね?」

『あ~、それで頼むわ。でもな、烏丸の文字は絶対入れといてな』

「あ、ハイハイ、利便性アピールですね」

『そう、オーナーの意向でね。烏丸は絶対。建ってるのほぼ堀川通やけど、マンション名、見てみて?』

「◯◯◯コート・烏丸。あ…、もうマンション名で烏丸って言うてもうてますやん…」

『極力、烏丸押しの感じでよろしくね』

 

まあ烏丸まで歩いて10分程度ですが、まさか強気にマンション名に入れてくるとは…。

烏丸通の地下鉄をピカーッと光らせてアピールしときました。

 

 

 

日々、厳しい競争が繰り広げられているようです、不動産業界。

まあこう言いつつも、けっこう楽しくて好きなんですけどね、こっち系の仕事。

そうきたか、という驚きに満ち溢れています。