松尾画報

辺境のカンガルーの近況

朗読の面白さ

「眠れへん、ヒマや、なんか面白いことしてくれ」

 

ある夜、うちの嫁が唐突にそんなことを言い出しました。

いや、なんとかしてくれって…、そんなん知らんがな、自分でなんとかせぇや。

………などと言ってはいけません。

子育てで疲れているんでしょう、そうでしょう、そうでしょう。

人生、こういうイレギュラーな物事を楽しんでいかないと。

 

とはいえ、私の下手くそなロボットダンスを見たって、別に面白くもないでしょうし。

ハイテンションPPAPでもやってやろうかと思いましたが、娘が起きそうですし。

ディープパープルをかけて情熱のエアギター演奏も考えましたが、娘が起きそうですし。

 

 

 

結局、お酒を飲みながら読んでいた小説を、朗読してあげることにしました。小声で。

村上春樹の「1973年のピンボール」という小説。

とりあえず、さっきまで読んでいたページを朗読します。

 

閉店後のジェイズ・バーに鼠がビールを1本だけ飲みにくるシーンです。

(ジェイと鼠は人間です。ニックネームみたいなものです)

ジェイは鼠に飼い猫の話をします。

誰かの悪意によって前足を潰された可哀想な猫の話。

 

ほろ酔いですが、さっき読んだばかりのページですし、すらすらと読めます。

でもね、朗読と黙読って、同じシーンでも全然受ける印象が違うんですよね。

 

 

「改めて読んだら、ひどいエピソードやなぁ。春樹はなんでこのシーン入れたんやろ、これ」

「このシーン、鼠が意外と感情出してしゃべってるやん。もっとクールに聞いてるイメージやったのにな」

「いやー!ごめん、今のちょっと違う!ジェイはもっと淡々としゃべるはずや!今のところもう一回読むわ!」

 

 

これはちょっと新しい遊びを発見したかもしれません。

朗読ってあらためてやってみると、ものすごく難しいです。

たぶん朗読したのなんて小学生以来ですが、これはかなり高度な作業ですね。

 

家でヒマを持て余すことがあれば、ぜひ一度やってみてください。

素面でなく、ほろ酔いでやるのがおすすめですけどね。

なかなかに楽しかったですよ。

 

 

まぁ、嫁はあんまり楽しそうではありませんでしたけど。

ロボットダンスしながら読んだ方がよかったのかなぁ?