松尾画報

『心呼吸』by柴犬

エリザベート①

ミュージカル「エリザベート」を観劇しに東京に遠征しました。今年は東宝「エリザベート」25周年の年で、屈指の人気作で演目ファンが付いている上、トート役は井上芳雄さん×山崎育三郎さん×古川雄大さんのトリプルキャスト、エリザベート役には元宝塚男役トップスターの望海風斗さん×明日海りおさんがダブルキャストで初抜擢され、チケット争奪戦は激化を極めていました。私は望海風斗さんのファンクラブ先行で梅田で4公演を申し込むも全落ち、その後、ぴあ先行で梅田2公演を申し込むも全落ちでした。一番人気と思われる井上芳雄さん×望海風斗さんの公演は東京でしか観られず、奇跡的にその1公演のチケットがファンクラブ先行で当選し、発券すると最前列の席でした。プラチナチケットを手にして、いざ東京へ。

私の初「エリザベート」観劇は宝塚歌劇100周年時の2014年花組で、明日海りおさんのトップお披露目公演でした。その時に初めてルキーニ役を演じる望海風斗さん(当時男役3番手)を観ました。私は観劇が大好きで、それまで20年以上、ミュージカル、ストレートプレイ問わず色んな芝居を観てきましたが、特定の誰かのファンになることはありませんでした。望海さんを初めて観た時に、役そのままに舞台の上で生きる望海さんに「まるでガラスの仮面の北島マヤやん!」と心を奪われて、ファンクラブに入会、気付けばファン歴はもう11年です。望海さんを初めて観た「エリザベート」で、望海さんのエリザベートを観れる日が来るなんて・・とても感慨深くそれだけで胸熱です。

あらすじ・・自由を愛し、類なき美貌を誇ったハプスブルク帝国最後の皇后エリザベートと、彼女を愛した黄泉の帝王“トート=死”。トートはエリザベートが少女の頃から彼女の愛を求め続け、彼女もいつしかトートの愛を意識するようになる。しかし、その禁じられた愛を受け入れることは、自らの死を意味した。滅亡の帳がおりる帝国と共にエリザベートに“運命の日“が訪れる―。

花組の「エリザベート」はCD、DVDと持っていて何度もリピートしてきたし、その後も2016年東宝、2016年宙組、2018年月組と観劇したので、物語も曲も展開も台詞も全て頭の中に入っています。幾度となく観てきた演目なのに、初めてエリザベートを理解出来たような気がしました。エリザベートが歌う曲は「私だけに」「私が踊る時」が有名で、エリザベートとしては「私が踊る時」が最高潮で、そこから物語は2幕の山場、ルドルフの闇落ちへと流れていきます。いつも2幕後半になるにつれ、エリザベートの存在感は薄めに感じていました。2幕後半の精神病院での「魂の自由」、コルフ島での「パパみたいに」、ルドルフのお葬式での「死の嘆き」、ラストにフランツと歌う「夜のボート」、これらの曲がこんなに哀しく心に染み入り、重さを帯びたのは初めてでした。エリザベートはルドルフもフランツも彼女なりに愛していたんだな、でも一番求めていたものは自由だったんだなと納得出来ました。望海さんよりも歌が上手い役者は沢山いると思いますが、こんなに芝居を歌に乗せれる人、歌に魂を込められる人はいない・・といつも思います。望海さんの歌は胸に響き、涙を誘いました。最後にトート=死を愛して、喜びに満ちた満面の笑みで歌う「泣いた〜笑った〜くじけ求めた 虚しい戦い敗れた日もある〜それでも私は命委ねる 私だけに〜」は過去作を振り返ると斬新な表現に感じました。ここはこんな風に振り切って明るく歌うのがエリザベートらしく、「自分の人生に悔いなし!」と思いを馳せているのが説得力がありました。少女時代〜晩年のエリザベートまで、声も所作も演じ分けて見事でした。望海さんは哀しみや強さを表現するのがとても上手いので、2幕からが望海さんの真骨頂だと思いました。エリザベートの生涯をエリザベートの気持ちに共感して、最初から最後まで観れたのは初めてかも知れません。

ちなみに、私は東宝Ver.より宝塚Ver.の演出の方が好きです。性病をうつされフランツの浮気を知ったエリザベートが「もう・・生きてはいけない・・」、そこからの、トート「死ねばいい!」の台詞が大好きです。トートとルドルフの「闇が広がる」の二人の絡みも宝塚Ver.の方が好きです。

エリザベートの感想はまだまだ続きます。次は井上芳雄さん(トート)、田代万里生さん(フランツ)、中桐聖弥さん(ルドルフ)、そしてトートダンサー、ルキーニという役について語りたいと思います。