『心呼吸』by柴犬
胸部レントゲンと胸部CT
肺について精査を受けたいと思った時に、胸部レントゲンと胸部CT、どちらが良いのか、何が違うのか、疑問に思ったことはないですか?
どちらもX線を使用した検査ですが、胸部レントゲンは、一方向から1回だけX線をあて肺の中の様子を平面上に映し出し1枚の画像にしたものです。胸部CTは、体の周りの色々な方向からX線をあてて、肺の断面を画像にしたものです。
同フロアに画像診断クリニックがあることから、当院では受診当日でもCTを撮ることが出来ます。CTは肺を輪切りした断面像なので、死角がなく、レントゲンでは見つけられない小さな病変でも見つけることが可能です。じゃあもう、レントゲンは要らない検査なのでは?と思われるかも知れません。そんなことはなく、うまく使い分けることが大切です。
レントゲンの長所は、①全体像の把握に優れている、②被曝量の少なさ、③検査費用が安いこと、④簡便さ、だと思います。①について、地図を見る時のことを思い浮かべて下さい。何処か行きたい場所がある時、まず全体の地図を頭に入れてから、拡大図を見ませんか?それと同じで、レントゲンでは胸部の全体像が把握しやすいです。心臓の大きさ、胸水の有無・経過、横隔膜の位置や形、異常陰影の場所と大きさ、気胸の程度、肺炎の拡がり、肋骨骨折等です。肺尖部(肺の最上部)の陰影は診断しづらかったり、縦隔(右肺と左肺に挟まれた胸腔内の中心部で心臓や大血管が位置するエリア)や横隔膜に重なる場所は死角になるので、ある程度の見落としは避けられないですが、それでもレントゲンから得られる情報はとても多いです。②レントゲンの被曝量は0.06mSV、CTの被曝量は約7mSV、低線量CTでも約1〜2mSVとなっています。レントゲン約16〜116回分=CTの1回分に相当します。③レントゲンは約2000円(3割負担)、CTは約6000円(3割負担)です。④レントゲンは院内で撮影出来、検査所要時間が短いです。
40歳以上の喫煙歴のある方は、肺癌のリスクが高いので、健診のレントゲンで異常がなくても、一度、CTを撮っておくのをおすすめします。若年者の方で風邪症状が長引いて咳が止まらない方は、肺炎を否定するためにレントゲンを撮っておくのは必要なことです。肺炎や気胸の治療経過をみるのには、数日〜数週間毎の頻回にわたる評価が必要なので、レントゲンで比較していくのが適切と言えます。レントゲンで捉えられないような小さな、もしくは淡い病変がCTで見つかったら、その経過はCTでしかみれません。肺も心臓も悪い方は、心不全(心拡大)の評価も兼ねて、定期的にレントゲンで経過観察を行うのが好ましいと考えます。