『心呼吸』by柴犬
国宝
映画「国宝」を観てきました。上映時間、2時間55分、あっという間だった、没入感がすごいとの感想が多いですが、私はあっという間ではなかったかな・・でもその一瞬に全てをかけて美しさを追求する歌舞伎界の厳しさ、芸術に身を捧げる人生を映画を通して存分に体感出来ました。リピートしたい映画です。
あらすじ・・後に国の宝となる男は任侠の一門に生まれた。抗争によって父を亡くした喜久雄は、女形としての才能を見出され歌舞伎役者の家に引取られた。彼はそこで、その家の御曹司と切磋琢磨し芸に青春を捧げていく。
総じて美しく見どころは沢山ありますが、脳裏に焼き付いたとりわけ印象的なシーンが2つありました。1つ目は、少年時代の喜久雄が初めて歌舞伎の舞台「連獅子」を観て魅了されるシーン。少年時代の喜久雄(黒川想矢)のキラキラした表情が最高で、歌舞伎に取り憑かれた様子がよくわかります。ここから喜久雄は始まったんだな・・と説得力がありました。黒川想矢さん、初めて知りましたが、瑞々しい演技がすごく良かったです。喜久雄の青春時代、いかに歌舞伎に熱中し夢中で楽しかったかを、自転車で通る桜道の映像効果もあって、見事に表現してました。
2つ目は、二代目花井半二郎の代役として、喜久雄が「曽根崎心中」を踊る時。開演前、プレッシャーで震える喜久雄に紅をひいてやる俊坊。いざ舞台が始まったら、喜久雄の才能を目の当たりにして、舞台を最後まで観れずに立ち去る俊坊。それに付いていく春江。光り輝く才能を前にして、自分にはそれがないと無力感で立ち去らずにはいられない俊坊と、喜久雄と自分は歩む道が違うと感じる春江、2人はどこか共鳴して喜久雄のもとを去ります。喜久雄の舞台映像と相まって、2人の感情の揺れが痛いくらいに伝わってきました。このシーンが個人的には映画のピークでした。後半はやや冗長に感じましたが、ラストの「鷺娘」につなげていくには、必要な流れだったのかな・・。
悪魔と取引しても、歌舞伎を極めたいと願った喜久雄の狂気的な人生。吉沢亮さんの美しさは怖いくらいに喜久雄にマッチしています。歌舞伎の舞台の美しさはもちろん、この芸術美は大画面で観て欲しいです。「国宝」、まだ観てない方は是非、劇場まで足を運んで観て下さい。
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