松尾画報

『心呼吸』by柴犬

マタ・ハリ

ミュージカル「マタ・ハリ」を観てきました。2018年に日本初演、今回が3回目の上演になります。私は初演を柚希礼音さん、再演を愛希れいかさんで観ています。今回はお2人共、観劇しました。2人が演じるマタ・ハリは最高でした。

あらすじ・・1917年、第一次世界大戦は激化の一途をたどり、フランス軍は敗色濃厚となっていた。フランスに籍をおくマタ・ハリは、エキゾチックな魅力と力強く美しいダンスで、戦時の最中も各国を飛び回り多くの人物と親交を深めていた。そんなマタ・ハリに目をつけたフランス諜報局のラドゥー大佐は、マタ・ハリにスパイになるよう要請する。一度だけという条件で任務を引き受けるマタ・ハリ。そんな中、マタ・ハリは戦闘パイロットのアルマンと出会い恋に落ちる。戦争、国家、大義、立場、保身・・、そして男たちが抱くマタへの愛憎は、自分に忠実に生きようとする彼女を次第に追い詰めていく・・。

「マタ・ハリ」はまずキャスティングが素晴らしいと思います。主要キャストが全員、ハマり役です。愛希さんは、再演で拝見した時よりも、ダンス、芝居、歌と全体的に洗練され、美しさとオーラに磨きがかかっていました。台詞にも感情が乗っていて、マタとして舞台で生きていたなと思います。柚希さんは、喉を痛めているのか、かすれ気味の声で、所々、歌がきつそうに感じましたが、表現力で上手くカバーされていたと思います。役者さんは華奢で細い方が多いですが、私は柚希さんのように、肉感がある女性の方が健康的に見えて好きです。柚希さんは、肉体美がとにかくすごくて、登場から圧倒的なスターの存在感でした。元宝塚男役トップスターなので、タバコの吸い方、銃の構え方など、さすがサマになっており、醸し出すオーラは絶対的でした。「マタ・ハリは辛い過去を生き抜いて、愛など信じていなかったが、歳下のアルマンと最後の恋に落ちる」、となるとアラフォーの強い女性の人物像が思い浮かび、柚希さんはマタ・ハリそのものに思えました。加藤和樹さん演じるラドゥー大佐は、色気たっぷりで初演から大好きです。低音ボイスが心地よく、ラドゥー大佐は私の中で加藤和樹さん以外、考えられないです。マタ・ハリに惹かれながらも脅したり、アルマンに命令しながらも嫉妬して感情を拗らせて、苦悩するラドゥー大佐が歌う「二人の男」は最高です。アルマン役の甲斐翔真さんは、純粋で愛に満ちた好青年がピッタリでした。今回新たに追加された曲、「遥か空から」は甲斐翔真さんの持ち歌?と錯覚するくらいに板についていて、幸せになれるひと時でした。ラドゥー大佐が色んな感情を拗らせている分、対比として、アルマンには純粋さが全面に欲しいところですが、加藤和樹さんと甲斐翔真さん、素晴らしかったと思います。ちなみに、加藤和樹さんは、本公演で、ラドゥー大佐とアルマンのWキャストに入られています。マチネとソワレで別人を演じるって混乱しないのかな?と思いますが・・超人ですね。

作中、楽屋で幾度となく繰り返される、衣装係アンナとのやり取り。マタ「今夜の客席はどう?」、アンナ「大入り満員です!」 、マタ「批評家は?」、アンナ「ヨーロッパ中の新聞が来ています!」、マタ「いいわね・・素敵!」。ラストのこのやり取りには涙しかありません・・。

パンフレットがハードカバーでとっても豪華でした。中の写真は皆さん美しく写真集のようでした。このパンフレットは「買い」です。

「マタ・ハリ」、戦時中に、強くしなやかに自分の人生を生き抜いた一人の女性ダンサーの物語。その時代の人々が夢見た「普通の人生」を、私達は今、思う存分生きているのでしょうか・・?11/2、11/3とLIVE配信(アーカイブ配信あり)があるのでお時間ありましたら、是非一度観てみて下さい。