松尾画報

『心呼吸』by柴犬

喫煙歴のある方へ

タバコを吸っている、もしくは吸っていた方は、肺癌について心配になるかも知れません。しかし、タバコと関係している呼吸器の病気は肺癌だけではありません。肺気腫もしくはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)という病名を聞いたことはありませんか?

 COPDとは、タバコの煙など有害物質(ニコチン、タール他)を長期間に吸うことで、気管支に炎症が起こり、肺の末端(肺胞)が破壊される病気です。40歳以上の中高年に起こりやすく「タバコ病」とも言われています。全体では死亡原因の第9位、男性では7位を占める疾患です。

 肺はスポンジみたいな構造ですが、肺に慢性的な炎症が起こると壊れていきます。壊れると、そのスポンジの目が粗くなり、スカスカな肺になってしまいます。これを「肺気腫」と呼びます。このような変化が起こると、気管支を支える力が弱くなり、息を吐くときに気管支がつぶれて、息を吐く力が弱くなります。息が吐ききれないと、新鮮な空気が入らないため、呼吸が苦しく感じます。水がいっぱいに入った、コップを思い浮かべて下さい。中の水を出さないと、新しい水は入りませんね。少ししか水が出ないと、少ししか新しい水は入りません。新しい水=酸素を含んだ新鮮な空気と考えて下さい。吐けなくなることは、新鮮な空気が入りくくなることであり、それゆえ動いた時に呼吸が苦しいという症状が出ます。他にも咳、痰などの症状があります。

 COPDの診断には呼吸機能検査が欠かせず、その結果によりCOPDは、I〜Ⅳ段階に分類されます。Ⅲ段階の後半、Ⅳ段階は、在宅酸素療法が必要になるレベルです。検査してみると、多くの方はⅡ段階であることが多いのですが、このⅡ段階のコントロールこそ、将来的に在宅酸素療法を回避出来るかがかかっているという点から、私はとても大事だと思っています。何にも勝る治療は禁煙(加熱式タバコもダメですよ)ですが、薬を使うなら、その柱は吸入薬になります。一度壊れた肺は元には戻らないので、治療の目標は、残存肺の温存、肺機能の現状維持になります。感染を併発することで、呼吸状態が急激に悪化することがあるため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの予防接種をしておくことも大切です。

 喫煙歴のある方で、咳、痰、呼吸苦などの症状がある、40歳以上の方は、一度、呼吸機能検査、胸部CTで精査を受けることをおすすめします。